2010年06月18日
そこに山があるから登るのだ

そこに山があっても、
回り道があればフモトを行きたい私ですが、
山しかなければ登るしかありません。
昔、歳の離れた従兄弟の家庭教師をしておりました。
小学5年生の彼は俊足自慢で、
運動会を控えて張り切っていました。
「絶対、絶対、見に来てね。
徒競走と、全校リレーに出るけんね。」
自信満々な顏が可愛くて、
私も当日は楽しみに見に行きました。
徒競走、当然ながら従兄弟は一等賞。
誇らしげな顏に、こちらも顏がほころびます。
うちの従兄弟ほど可愛い男の子はおらん。
そんな気持ちで続いて走る子供達を見ていたのですが、
ある組がスタートした時、はっとしました。
一人、あきらかに障害のある子供が走っているのです。
みるみる引き離され、差は開く一方。
「なんで一緒に走らせるの?」
と、心の中でつぶやきました。
ところが、もっとハッとすることが起きたのです。
その子がやっと半分のあたりに差し掛かったとき、
パーンとスタートの合図が鳴り、
次の組が走り出したのです。
早くしないと、次の組に抜かれてしまうのでは??
その子はそれを知る様子もなく、
ただひたすら走るのですが、
一歩一歩がゆるくもどかしく、
ころばないのがやっとのように見えるのです。
彼がゴールしてからスタートさせればいいのに。
誰か一緒に走ってやるとか。
先生はどうした。
誰も気付かないの?
ハラハラ、イライラ、自分が飛び出して、
一緒に走りたいような心境です。
同じ組の子供達はとっくにゴールして、
次の組を応援しています。
彼は、ひとりぼっちで走っているように見えました。
頑張れ頑張れと、必死で応援していた甲斐があったのか、
なんとか次の組が追いつく前にゴール!!!
良かった~と思うよりも早く、その瞬間に、
ゴールにいた先生がぱっと飛び出して、
彼を思い切り抱きしめ、
両手で高々と抱き上げて、
くるくると回ったのです。
先生も彼も、
とてもとても誇らしげな笑顔でした。
先生は、ゴールでこの瞬間をずっと待っていたのですね。
彼は生まれながらに険しい山に登っているようなもので、
それを他人がどうこう出来るものではありません。
徒競走に出すのは残酷だと最初思ったけれど、
社会に出たら、
いやでも他の人達と一緒に走らなければならないのです。
考えてみれば、
誰もが自分の山に登っているようなものです。
それぞれが自分にしかわからない苦しみを抱え、
それでも投げ出さずに頑張って登っているのですね。
私も私の山に登っています。
険しくて、遭難しそうな気がするときもあるけれど、
そこを抜けると楽しかったり、
フモトを行くのでは見ることのできない、
美しい景色を見ることが出来たりするのではないでしょうか。
梅雨はまだまだ続きます。
今日も元気出していきましょうね。