2011年06月29日
やっぱり猫が好き

昔の猫の飼い方は、
ほとんどが放し飼いで、
家から出さないなんてことはあり得ませんでした。
今は車が増えてしまって危険が一杯なこととか、
よそのお宅に迷惑かけるとか、
法律のこともあって少なくなってます。
夕べテレビで
内田百閒の飼っていた猫の話がありました。
「ノラ」という名前なのですが、
ある日いなくなってしまい、
百閒がそれはそれは悲しむというお話。
それを見ていて、
私は「クロ」のことを思い出しました。
黒猫だからクロ。
安易なネーミングであります。
クロは雄猫で、目が丸く太っており、
黒猫というより黒タヌキな感じ。
大人しく野良猫にいじめられては傷を作っている
弱虫でもありました。
ある日の午後のこと、
私が台所にいるとき、
玄関の方からクロが鳴く声がしました。
なんとなく不審に思ったのは、
クロは静かな猫で、
エサをねだる時や布団に入りたいとき、
用事のある時にしか鳴かないのです。
しかも
クロが出入りするのは必ず台所で、
玄関に行くことは嘗て一度もないことでした。
「クロや~。」
と言いながら居間の戸を開けて
玄関に続く廊下に出ると、
廊下の先の玄関に出るところに
クロが座っていました。
夏のことで、
玄関の戸は開けっ放してあります。
外から差し込む光が、
クロのシルエットを際立てておりました。
「クロ」
ともう一度呼ぶと、
クロは短くニャーと鳴き、
立ち上がってくるっと踵を返すと、
スタスタ玄関の方へ歩いて、
そのまま出て行ったのです。
なんだか胸騒ぎがして、もう一度
「クロ」
と呼びましたが、
振り返りもせず、まっすぐ門の外へ消えていったのでした。
クロは、それっきり帰ってきません。
あとで弟に、
なんでそのまま行かせたのかと
泣きながら訴えられましたが。(ヤツも猫好き)
今でも思い出すと、
不思議な気持ちになるのです。
あのあと、どうしたのかなあと。
いつもへタレな猫だったのに、
あの時は妙に凛としておりました。
もう一度、会いたいな。