2009年09月18日
親の背中

30代の終わりに、
同級生の友達が未婚の母になろうかどうしようか、相談してきました。
ちょっと手に余った私は、
東北地方で薬局をしている年上の女性に相談したのです。
「参考になるかどうかわからないけど、私の話をするね。」
と言われて聞いたのが次の話です。
実は一人娘が2歳のとき、主人が亡くなったので、
女手一つで育ててきたのよ。
日曜祭日も休みのない店だから、
参観日はおろか、運動会や入学式、卒業式にも行ったことないわ。
食事も満足にしてやったとは言えない。
今でも忘れないんだけど、
娘が4年生の時のことなの。
その日はとにかく忙しくて、
買い物にも行けず食事も出来ず、夜の9時をまわって店を閉めたの。
何か作ろうにも材料はないし、レストランも開いてないから、
娘と二人でラーメン屋さんに行こうってことになった。
二人で坂道をのぼっている途中に大きなお家があって、
灯りがついてたわ。
そしたら娘が
「お母さん、〇〇ちゃんの家だよ。」
って言ったの。
その灯りがいかにも温かく、幸せそうに見えたので、
ああ、きっと娘はお友達が羨ましいんだろうなあと思うと、
自分達がみじめで、娘が不憫で、急に涙が出てきたの。
泣きながら娘に
「ごめんねごめんね。
お友達はきっと美味しい夕食を食べて、家族で団欒してるだろうに、
あなたはこんな時間にお腹を空かせてラーメン屋さんに
とぼとぼ歩いて行かなきゃならないなんて、
こんなお母さんで許してね。」
そう謝ったら、娘は頭をふって
「ちがうよ、お母さん。〇〇ちゃんの家は大きいけど、
今お兄ちゃんがぐれてて、お父さんは帰りが遅くて、
いつも夫婦喧嘩してるって。そんなの私、ちっとも羨ましくない。
私はお母さんが私を大好きなこと、よくわかってるから。
とっても幸せだよ。」
私は思わず娘を抱きしめて、そこで大泣きしてしまったわ。
小さい娘が自分の運命をしっかり受け止めて
ひがみもせずに一生懸命生きてるんだなあと思うと、
親の方もしっかりしなきゃあと頑張ってきたのよ。
というのが、私が聞いた話です。
そのお嬢さんはその後、薬大に進み、
今はお母さんの薬局を手伝われています。
私もお店をしてるので、子どもにしてやれないことで悩むことも多かったけど、
この話を聞いてたので、ずいぶん助かりました。
またこれが誰かの助けになればと思って紹介します。
あ、余談ですが、友達は未婚の母となり、
息子を有名中学に通わせながら頑張ってます。