2009年04月13日
魔女と漢方

ジョルジュ・サンドの小説、
「愛の妖精」ってご存知ですか?面白いですよ。
主人公の女の子、ファデットは
お祖母ちゃんと弟の3人家族なのですが、
村では「魔女の孫」と言われていじめられています。
つまり、お祖母ちゃんが「魔女」ということです。
お祖母ちゃんに直接言うと、呪われるのが怖いので
孫をいじめて解消しているというわけです。
でも、このファデットも負けてなくて
みんなに仕返しをするので、余計にいじめられてしまうのです。
もう一人の主人公である男の子から
「なんでそんなことするの?」と聞かれたファデットは
「だって、みんな困った時にはお祖母ちゃんを頼って来るくせに
助けてもらった後は、あんなことが出来るとは、やはり魔女だ、
恐ろしいババアだ、なんて言うんだもの。」と言うのです。
お祖母ちゃんは、薬草や季節や地形などの自然に詳しい人、つまり
ハーブ、アロマなどを使って、病気を治す人だったようです。
以前、アロマの先生から、西洋では魔女として迫害を受けた歴史があると
聞いたことがあります。処刑された人も多かったとか。
東洋で言えば、さしずめ漢方家というところでしょうか。
漢方には天人合一という宇宙観があり、
自然の薬草を使ったり、季節に合わせた養生を指導したりするところが
非常に共通しています。
でも、「魔女」という概念はありません。
「妖術使い」と魔女は、どこか違うようだし、
歴史の中でも有名な漢方家などは
死んだ人を生き返らせたとか、
一目で病気をあてて、奇跡のように治したとか
英雄伝説みたいな話が多いのです。
この違いは何故だろう。
日本では「八百万の神」と言う言葉があり
森羅万象に神が宿るという自然信仰がありますから
そこなのかなあ。
狩猟民族と農耕民族の価値観の違いでしょうか。
いずれにしても
今ではアロマ、ハーブは市民権を得て認められています。
それと逆に、漢方はすたれつつあります。
よく
「漢方の資格を取りたいのですが。」
と相談を受けるのですが
漢方には公に認められる資格は、何一つありません。
何かの団体が企画する講習会などの修了書などはあります。
中には「認定書」と書いてあったりします。
でも、公の資格ではないのです。
明治維新で政府に切り捨てられて以来、
ずっとそうなのです。
自然を認めつつある西洋と逆の道をたどっているような
そんな気がして残念な今日この頃です。