2011年04月12日
わかっているから

むかし観た映画のはなしです。
映画に出て来る男の子は、
お母さんに対して素直になれません。
それはお母さんを激しく怒っているから。
実は男の子は、
お母さんの浮気を知ってしまったのです。
それは一時のことでしたが、
男の子の心に中に深い傷となっており、
お母さんがいくら謝っても
許す気にはなれないのでした。
そのうちお母さんは病気になります。
明日をも知れぬ、重い病気です。
それでも男の子は
頑なな態度を改めようとはしません。
周りの人たちは言います。
「お母さんを許してあげなさい。
お母さんが生きている間に。」
いくら言われ続けても、
男の子は嫌だと言い続けるのでした。
ある日、男の子はお母さんの枕元に呼ばれます。
私は考えました。
きっとお母さんは言うだろう。
「お母さんを許してちょうだい。
だって、私はもうすぐ死んでしまうんだもの。
あとになって後悔しても遅いんだよ。」
そう言われたら男の子だって、
きっとお母さんを許すのだろうなあと。
ところが、お母さんが言ったのはこうでした。
「お母さんを許さなくていいんだよ。
許してくれなくても、
お前がお母さんを大好きなことはよくわかっているから。
だからお願い。
お母さんを許すと言わなかったことで、
決して自分を責めないで。
私には、本当によくわかっているから。
そして私はお前が大好きだから。」
まだ若かった私は、
脳天をかち割られたほどのショックでした。
まさかそんなセリフが続くとは。
結局その男の子は、
お母さんを許すとは言えないまま
永遠の別れを迎えてしまうのですが、
きっとお母さんには
男の子が「許す」と言えないことがわかっていたのでしょうね。
だから、そのあと苦しまないでほしいと、
それだけを切に願ったのでありましょう。
ここのワンシーンだけで、
今でも印象に残る映画であります。