2011年10月03日
ローカル線の風景

里帰りした時、
ローカル線の呉線に乗りました。
これは広島から瀬戸内海に沿って走る、
田舎の電車です。
昔に比べると、埋め立てが進み、
海が見えない所も増えているのですが、
それでもまだ、穏やかな瀬戸内海の景色を見るには十分で、
夕焼けの風景などは
鮮やかに燃える空と海と小さな島々が息も止まるほどの美しさです。
あ、画像の風景は呉線ではありません。
手持ちになかったので、イメージ画像です。
誤解のないように。(興ざめさせてスマン)
先日、呉線を利用した時の話。
私が乗る駅は始発だったので、
四人掛けの窓際の、景色の良い席に座っておりました。
それから二駅ほど過ぎたとき、
中年のオジサンが乗り込んで来たのです。
二人連れでした。
私が座っていたところは、
はす向かいにサラリーマン風のお兄さんが座っているだけだったので、
席は二つあいているのですが、
隣りではなくて斜め向かいになります。
きっと隣り同士に座りたいだろうなあと思って、
私はサラリーマン兄さんの隣りに席を移り、
「こちらにどうぞ。」
と言いました。
オジサンはとても嬉しそうにお礼を言いながら、
二人並んで腰掛け、おしゃべりを始めました。
それで初めてわかったのですが、
一人は少し障害のある人のようで、
もう一人のオジサンがしきりにいたわっている様子が
とても伝わってくるのです。
兄弟なのか友達なのか、
それはわからないのですが、
景色を見ながらの会話は、楽しそうでありました。
この話は、
キリンさんって優しいのね、そう思ってほしくて紹介してるのではありません。
電車やバスに座っていて、
席を譲ろうかな、と思う局面は誰にでもあるはず。
でも、そこで実際に行動するのは
ちょっとした勇気です。
特に私のように自意識過剰な人間には、
なかなかそれが出来ないのが常。
ところが、そんな私が何も考えずにそれが出来るのは、
呉線だから。
何故なのか?
呉線はとても賑やかです。
誰かがいつもおしゃべりしたり、しています。
その時も、女子高校生らしき集団が
小鳥のようにさえずっていましたし、
大学生らしき男の子達も、なにやら話しておりました。
私もかつてはそうでした。
この電車に乗ると、
必ずといっていいほど知り合いに出会い、
降りるまでおしゃべりしたものです。
よほどウルサイ時には注意もされたけど、
ほとんどは黙認。
この電車に乗っている人達は、
知らない人であってもなんだか身内のような、
そんな気分でいられるのです。
これがシーンと押し黙った普通の電車やバスの中だと、
「こちらにそうぞ。」
と席を譲ったり、
重そうな荷物を持った人に
「持ってあげましょうか?」
と声をかけたり、
なかなか出来ません。
だって、
何かちょっとしでかしただけでも
「ちっ!!」
と白い目で見られそうだもんね。
呉線は、そのあたりが寛容です。
もしも私が何かにつっかかって転びそうになっても、
知らん顔したり、
バカじゃないの?ってな冷たい顏しないで、笑ってくれそうな感覚。
(わかりにくいか?)
そんな中だから、
素直な気持ちで席を譲ったり、
荷物を持ってあげたり、
出来るような気がします。
そんなことを考えたので、
ここでちょっと紹介してみたのです。
世の中が殺伐として、
気持ちがささくれ立ってそうな人が多いなか、
心が和む空間なのでありました。