2013年08月23日
思い出はいつも優しい

実家の庭です。
今朝のテレビで園芸療法の話をしていました。
その効果の一つとして、
土や植物の匂いを嗅ぐことで思い出を呼び覚ます、
ということがあるのだそうです。
あまりにも有名な話ですが、
プルーストの「失われた時を求めて」の中で主人公が、
紅茶にマドレーヌをひたした瞬間の匂いによって、
幼年時代を思い出す、という描写があります。
そんな経験、ありませんか?
私は沈丁花の匂いをかぐと、
高校受験の前の頃を思い出します。
寒い2月の夜遅く、塾から帰ってくると、
門の後の沈丁花が迎えてくれたのを思い出すからです。
バッグのお店に行って牛革の匂いをかぐと、
小学校入学直前を思い出します。
ランドセルの匂いだからね。
夏の朝、露を含んだ草の匂いからは、
ラジオ体操を思い出します。
嗅覚というのは不思議なもので、
視覚や聴覚よりも、ずっと古い原始的な感覚であり、
脳の色んな働きをうながすらしいのです。
「言い伝え」って、ありますよね。
今では文書もコンピューターもあって、記録ということが出来ますが、
昔はそんなものありませんでした。
中国の話なのですが、
「言い伝え」をするとき、
それは家族の歴史だったり昔話だったり「バルス」だったり、
様々な大切な事を後世に伝えようとするときには、
人を集め、話をしながら、
香料の入った小さな壷を回したというのです。
その話を聞いた人が、
今度は自分がその話をするときに、その香料を嗅ぎ、
記憶をより鮮明に思い出すために。
そこでまた同じ壷が回され、
そこで話を聞いた人が、また同じことを語り継ぐのです。
長い長い伝承の歴史の中に、
匂いというものが一役かっていたんですね。
「後を振り返るな」
なんて言葉もあるけれど、それとはまた違います。
思い出すときの脳の働きは、
創造するときに似ているといいます。
私の脳を活性化してくれる匂い、たくさんあります。
川の水と苔の匂い、寒い朝の梅の花、折れた生木、
泥んこの水たまりとゴムの長靴、ひなたぼっこしてた猫の匂い、
線香花火の最後に玉が落ちたあとの匂い、
キリがないのでやめますが、
匂いって本当に大切なもの。嗅覚に感謝です。
この頃は、清潔志向もあって匂いを排除する傾向にあります。
清潔はいいんだけど、残してほしいものもたくさんあるなあと思う、
今朝のキリンさんでありました。