2013年10月07日
ぼくの心に灯をともす

画像は灯台だそうです。
中学2年生のとき、美化委員だったことがあります。
ここで笑ったアナタ、
なんで片づけ下手でお掃除苦手なキリンさんが美化・・・???
と思ったでしょう。
体育館裏に直行ですよ。
美化委員のお仕事の一つに、
同じ学年各クラスの掃除を見て回り、美化日誌に記録する、というのがありました。
その頃の私は、きちんとするとか真面目であることが、カッコ悪いように思え、
時間前に来るより遅刻するほうが、
学校の掃除をきちんとするよりも、さぼる方が、
なんだか立派なことのように勘違いしておりました。
先生に怒られることなんか、ちっとも怖くない。
そんな人が強いのだと思えてならず、
「いい子ぶってる」とか、
「くそ真面目」とか、
そんな言葉がハバをきかせてた頃です。
ある日の放課後、
美化日誌をつけるために、各クラスをまわり、
あるクラスに来てみると、
・・・・・・・・・・誰もないんですけど・・・・・・・・・。
と思ったら、いました。たった一人。
それはサカムラくんという男子だったのですが、
淡々と机や椅子を動かし、
一人で掃除をしていたのです。
サカムラくんとは同じクラスになったことはなく、
小学校も違っていたので、
中身がどんな人なのか、知りませんでした。
だけど、長身の彼はバレー部に所属しており、
涼しげな顔で、大人しいけれど、
けっこうモテるらしいという噂は聞いたことがあったのです。
「美化委員じゃけど~、他の人らは?」
と声をかけると、手を休めもせずにこっちを向いて、
「みんな帰ったよ。」
「え~~~!!!なんで?」
「さあ。」
「なんでサカムラくんは帰らんの?」
「ぼくも帰ったら、掃除する人がおらんじゃろ。」
「え~~~、ひどいね、みんな。
日誌の中の掃除態度のところ、Cになるよ(ABC評価をつけていた)。」
「しょうがない。まあ綺麗にするけん、マケといてや。」
サカムラくんはそう言って、
机を運びながらにっこり笑ったのです。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・惚れた。
みんながサボった掃除を
一人でするなんて、私の中ではとってもカッコ悪いことでした。
要領が悪く、あか抜けない行為みたいで。
だけどサカムラくんは、
「みんなヒドイよ!!」と訴えるでもなく、
「なんでオレがこんなことを!!」と怒るでもなく、
ほんとうに淡々と掃除をしており、
なんだかそれはちょっと素敵な光景だったのです。
日誌を片手に教室をぐるぐるまわってた私は、
なんだかだんだんヘンな気分になってきました。
どんな気分か?
それは、私もお掃除をしたくなってきたのよ!!
私ともあろうものが!!
「早う帰りたいけん、手伝っちゃげるわ。」
と、言いながら私はほうきを手に、サカムラくんが机がどけたところを、
掃いてまわったのです。
そして二人の最初で最後の共同作業はめでたく終わり、
「しょうがないけん、Aにしとくわ。」
と言う私にサカムラくんは
「サンキュー。」
とさわやかに笑ったのでありました。
その笑顔は、
人生をナナメに見ることが大人だと勘違いし、
ささくれかけていた私の心に、あたたかい灯をともしてくれたのです。
真面目も、悪くない。
そう思えたのは、それが初めてだったかもしれません。
サカムラくんへの恋心ですか?
それは翌日もう別の男子に心変わりしましたので、
長くは続きませんでしたが。
だけど、その時の灯は、ずっと私の心から消えることはないのでした。