2013年11月07日
妄想の花が咲く頃

妄想、それは根拠もなくあれこれ想像すること。
(辞書を引きました。)
あれは私が大学1年生のときでした。
同級生の男子にお茶に誘われたことがあります。
「ちょっと相談があるんや。」
と言われて付き合った私に、彼はこう切り出しました。
「こないだ、オレの下宿の前でタナカとばったり会うたんや。」
タナカとは、共通の女友達のことです。
そういえば、下宿が近いと聞いたような気もします。
「サ店にでも行こか思てんけど、
仕送り前で金がないさかい、オレの下宿に来るか?いうたら、
来る言いよってん!!どう思う?」
「いや、べつに、普通ちゃう?」
「それだけじゃないんや~。冷蔵庫のコーラを一緒に飲んだんやけどな、
なんや、暑いね、言いよんねん!!!」
「そりゃ、暑かったんやろ。」
「黙って聞け!!それだけやないで!!ほんでな、あいつ・・・・・・、
シャツのボタンを自分で外しよったんや!!!」
「えっ!!!!」
さすがに私もちょっと驚きました。
タナカさんは、井上真央に似た、可愛い子なんです。
井上真央が色っぽい目つきでシャツのボタンをはずす姿が・・・・・。
「ほんで、どうしたん?」
「オレ、もうどぎまぎして、よう顔も見られへんようになって、
何を話したかようわからへんねん。
そしたら、帰るわ言うてな、帰り際に小さい声で・・・・・・・・。」
「小さい声で?」
「あんがい意気地ないね。言いよったんやーー!!!!」
「ええええええっ!!うそっ!!」
「ほんで、頼みなんやけど・・・・・・・・。」
「なん?」
「オレ、ええで言うてくれへん?」
「は?」
「いや、こないだはビックリしたけど、アイツがその気なら、ええねん。」
そんなん、自分で言いいなはれ、と言いたいのをこらえたのは、
紛れもなく好奇心なのでありました。
そしてタナカさんに話をする私。
「こないだ、ニシムラくんの下宿に行ったんやて?」
「うん、行ったよ。」
「ほんで、シャツのボタン外した言うてたけど、ホンマ?」
と、いきなり核心を突く私。
「えっ、ちょっと待って。なにそれ。」
「でもニシムラくんが言うてたで。」
「ああ、それはなボタンをきっちり上まで止めてたんが暑うなって、
いっこ外しただけやで。」
えっ、いっこ?たった?
「そやけど、帰り際に、あんがい意気地ないね、言うたんやろ。」
「はあ~~????そんなこと、言うわけあらへんやん。」
そこでちょっと考えたタナカさんは、
「あ、部屋が男子にしては片付いてたから、
あんがい片付いてるねとは言うた気がするけど、そんだけやで。」
「それに、わたし彼氏おるし。ニシムラくんは有り得んなあ。
アンタもそんな妄想を真に受けんといて~、あははははは。」
なんて人騒がせな男・・・・・・・。
それにしても、
シャツのボタンをいっこ外されただけであたふたし、
「あんがい片付いてるね」を
「あんがい意気地ないね」と聞き間違えるとは。
とんだ勘違い野郎だ。
きっとその後も、あんなことやこんなこと、
妄想の花を咲かせたのでありましょうなあ。
そのあと、どうやって事実を伝えたのか覚えてないのですが、
そのまま放っといたような気もします。
若かったあの頃、そんなことばかりの日々でありました。