2015年09月02日

いじめの記憶

いじめの記憶


いじめたことも、いじめられたことも、
生きていれば多かれ少なかれ、あるものです。

その中でも、胸の奥に小骨がささったみたいに、
という表現がぴったりな出来事がありました。

小学校5年生のころのことです。

1年生の時からずっと同じクラスに、たかこちゃんはいました。

可愛いし、明るいし、素直だし、足が速くてスポーツ万能で、
たかこちゃんが誰かの悪口を言うのを、聞いたことがありません。

もちろん学年でもとても目立っていて、
「友達になりたい女子ナンバーワン」という代名詞がぴったり。

そんなたかこちゃんを、みんなでいじめたのです。

いじめって、何の落ち度がなくても始まるものなのです。

きっかけは、全くバカバカしいことなのですが、

「たかこちゃんのブルマ‐がヘン」と誰かが言いだしたこと。

たかこちゃんのブルマ‐は、
お兄ちゃんのズボンを縫い直したものでした。

当時はそんなことは珍しくなくて、
実は私も母の手縫いの、おもいっきり広がった提灯ブルマ‐だったので、
ヒヤヒヤしたのですが、
何故かこの際お目こぼし。

いじめって、ターゲット以外はどうでもいいんです。

「リレーの選手なのに、あんなブルマ‐は恥ずかしい。」
誰かが強く言うと、
引きずられるかのように、そうだそうだと言い始めるから怖い。

みんなの憧れのたかこちゃんだったのですが、
憧れと妬みは表裏一体。

その日から、みんなたかこちゃんを避けるようになりました。

ある日、仲の良いメンバーで遊ぶ計画をたてました。
メンバーの一人の家に集まろうと。

いつもなら、当然のようにたかこちゃんも誘うのだけど、
黒い心に支配された私たちの合言葉は、

「たかこちゃんには、絶対に知らせないように。」

当日、みんなで集まって楽しく遊んでおりました。
おばちゃんがオヤツに出してくれたお芋を美味しく頂いていたとき、
玄関で声がしました。

「ごめんください。」

全員が一瞬、凍りつきましたね。

「たかこちゃんだ。」

何故か、全員で玄関に走りました。
どどどどどどっと。

みんなを見て、目を丸くして立っているたかこちゃん。
ちょっと黙っていたけど、にっこり笑って、

「みんな、来とったんじゃね。」

「・・う、うん・・・・。」

実は、たかこちゃんの家は、そこのご近所。
その日は偶然遊びに来たのでした。

そして一瞬で、自分だけが誘われなかったということを知ったのです。

みんな、しばらく気まずく押し黙っていたのですが、
たかこちゃんが再び口を開きました。

「あっ、うち、お母ちゃんに用事を頼まれとったんじゃ。
 帰るね、バイバイ。」

帰るまで、ずっと笑顔だったたかこちゃん。

だけど、心の中はどうだったのでしょう。

あの時のたかこちゃんの笑顔と、
それを見た時の私の心の痛みは、未だに忘れられません。

きっと、そこにいた全員が同じ心の痛みを感じたはずです。

その証拠に、次の日から、
たかこちゃんとの友達関係は復活しました。
何事もなかったかのように。

その後、誰もそのことを口にしたことはありません。
たかこちゃんも、何も言いませんでした。

だけど、何も悪くない人をいじめてしまったという苦い記憶は、
今でも心に刺さったまま、しっかり残っているのです。


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Posted by キリンさん at 12:53│Comments(4)王様の耳はロバの耳
この記事へのコメント
あの頃は、学校が世界の全てなんですよね。

ワタシにもありますよ、と言うか
みんな持ってる筈です、苦い思い出をね。
Posted by てっちゃーんてっちゃーん at 2015年09月02日 14:06
てっちゃーん

そうそう、苦すぎる思い出も多々ある。
ゼッタイにここでは披露できまへん。

そうやって大人の階段のぼって来たのです。
Posted by キリンさんキリンさん at 2015年09月02日 17:04
お久しぶしです
そして、新装オープンおめでとうございます!実はオープンしたときにメールしたのですが、アドレスが代わられてたのか?メール届かず帰ってきちゃいました
なのでご挨拶遅くなりました

苦い思いで、ありますです
されたこともしたことも忘れられない…
後悔しか残らないので、娘にはその後悔をさせたくなく話して聞かせたりしてます
Posted by Bebe at 2015年09月02日 21:22
Bebeさん

ありがとうございます。
オープンの時は、まだインターネットがつながってなかったの。

今なら大丈夫なので、
がんがんメールください。

苦い思い出、
忘れちゃいけないとも思うのです。
繰り返し後悔することも大切なような気がして。

子どもには素直に育ってほしいですね。
Posted by キリンさんキリンさん at 2015年09月03日 16:20
 
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    コメント(4)