2014年12月09日

おはぎがお嫁に行くときは

おはぎがお嫁に行くときは
昨日、cafe茉莉花さんの「まつりか祭り」に行きました。

祭りの時だけに出される「おはぎ」が目当てです。
ちゃっかり美味しいランチも食べたけどね。

おはぎと言うと、母方の祖母を思い出します。
以前もご紹介したかと思うのですが、
ビンボーな方の祖母です。

いや、貧乏というわけではなく、
後妻だった祖母は、先妻の子である長男のやっかいになっており、
遠慮しながら生きていたので、小遣いをもらわなかったのです。
というわけで、祖母のフトコロはいつもピーピーでした。

春になると、いつもやって来て、
「つかさちゃん、草餅食べる?」
と聞くのです。

この草餅とは、よもぎを摘んですり鉢で磨り、
炊いたもち米に混ぜて作る、おはぎのことなのでした。

「うん、食べる。」
と言うと、祖母は実に嬉しげにぱあっと笑顔を浮かべ、

「ほしたら、田んぼに行こうや。」
と私を誘います。

田んぼの横にはヨモギが群生しており、
祖母の指示で、柔らかい新鮮な葉っぱだけを摘むのでした。

この仕事が好きでした。
だけど、私が必要以上に熱心に摘むには他に訳がありました。

祖母は自分では「柔らかいとこだけ」と言うくせに、
案外ちょっと下の固い部分まで入れてしまうのです。

そうすると、いくら磨っても繊維が残ってしまい、
食べると舌に触り、歯に挟まると言う厄介を引き起こすのでした。

だけど、私はどうしても祖母にそれを言えませんでした。

いつも質素なもんぺ姿で、申し訳なさそうにしている祖母が、
今は別人のように輝いているのです。

皺だらけの顔を笑顔いっぱいにして、せっせとヨモギを摘む祖母。

「茎が残って口の中が痛い」
なんて言おうものなら、
その笑顔がいっぺんに消え、祖母がしゅ~んと小さくなってしまいそうな、
そんな気がしたのでしょう。

だから私は、少しでも柔らかい部分を増やせるようにと、
一生懸命ちいさな手でヨモギを摘むのでありました。

大漁のヨモギを抱えて家に戻り、
もち米とアンコを炊いて、おはぎが出来上がります。

まだ熱熱のもち米も餡子も、祖母は素手で扱うのが、
どうして火傷しないのだろうと、不思議でいつも見ていました。

「熱いけん、気を付けんさい。」
そう言われて食べる草餅の美味しいこと。

「美味しい?」

「うん。」
そう答えると、祖母はまたぱあっと笑顔になり、満足そうに、

「いっぱい食べんさい。」
と言うのでした。

そして私は祖母に気付かれないように、
そっと口の中の茎を出すのでありました。

子どもの頃の、春の日の、忘れられない思い出です。


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Posted by キリンさん at 13:14│Comments(0)王様の耳はロバの耳
 
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