2014年10月22日
出るに出られぬ時。
新婚の頃、福岡でマンション住まいをしていたキリンさんです。
私が住んでいたところは、
玄関のドアを開けるとすぐ左に、
廊下に面してお風呂があるという造りになっておりました。
ある夜、私はそのお風呂に入って、
ゆったりと湯船につかり、
あ~、極楽極楽と至福を味わっていた時のことです。
いきなりドアがバンっ!!!!と乱暴に開けられた音が、
廊下に響き渡ったのですよ。
「出ていけっっ!!!!!!!」
お、お隣だよ・・・・・・。
温かい湯船の中で氷りつく私。
お隣のご夫婦って、日頃はとても知的で上品な二人なんです。
ダンナさんは大手の企業にお勤めで、
奥さんも英語がしゃべれるような、そんな人たち。
「あなた、やめてええええええっ!!!」
「もう飯も作らんでいいっ!!!オフクロの面倒もみんでいいっ!!」
怒号とともに、ドアをバンバン叩く音が。
こ、こえ~よ~~~。
「やめて~~~。」
「出ていけ!!!!」
はっきり言って、出て行きたかったです、私は。
だけど、湯船から出たら、ざばあっと音がして、バレてしまうじゃないか。
お隣の奥さんが聞いてたと知ったら・・・・。
で、出られない。
「帰ってくるなっ!!」
「いやよ~~っ!!やめてっ!!」
言い争う間も、ドアがバンバン、開いたり閉まったり叩かれたり。
すごい騒ぎです。
どのくらい続いたでしょうか。
終いには、お互いの声がだんだん低くなり、
奥さんのすすり泣く声とともにドアがゆっくりと閉まって、
お騒がせな夫婦喧嘩は終わりを告げ、
湯船の中で微動だにせず耐えた私はといえば、
すっかりのぼせてしまったのでありました。
翌日、お隣はどうなったかなあと考えていた夕方。
ピンポーンとチャイムが鳴り、誰かが来たようです。
「こんにちは~。」
にこやかに立っていたのは、誰あろう、となりの奥さん。
げっ!!うろたえる心を必死で抑える私。
奥さんは、手に小鉢を持っていました。
「あのね、ちょっと作りすぎてしまったので、おすそ分けなの。
食べてね。」
それは白ごまがふってあるレンコンのきんぴらが、
美味しそうに盛られておりました。
「あ、ありがとう。頂きます。」
「いいえ、お口汚しだけどね。」
と、にっこり笑ってドアを閉めた隣の奥さん。
まさか、私がお風呂に入ってたのがバレていたのか?
電気ついてたし。
お詫びなのか?そうなのか?
複雑な気分で食べたレンコンのきんぴらですが、
私の気分などとは裏腹に、文句なしに美味しかったのでありました。
いったい、あの夜の喧嘩は何だったのか?
聞けないままに宮崎に引っ越したのだけど、
どこにでも色々あるもんですね。
お風呂に入ると、たま~~に思い出す出来事なのでした。
Posted by キリンさん at 17:19│Comments(0)
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