2014年10月03日

村の鎮守の神様の

村の鎮守の神様の
秋になると、お祭りが恋しくなります。

子どもの頃は、毎年新しい着物をこしらえてもらって、
頭に大きなリボンをつけ、
鈴のついたポックリを履いて出かけたものです。

お祭りというと、わくわく楽しい思い出ばかりなのだけど、
一つだけ、今でも口惜しくてたまらない事件がありました。

それは私の町ではなく、
おばあちゃんの家の側にある神社のお祭り。
歩いてそれこそ1分くらいのご近所です。

たぶん小学校の4年生くらいで、
弟がまだ幼稚園だったと記憶します。

土曜の半ドン授業が終わると、
すぐに二人でバスに乗り、おばあちゃんの家にやってきました。

おばあちゃんの家で昼ごはんを食べると、
もちろんすぐにお祭りにGO!!

モタモタと、いつまでも食べている弟には、
「先に行くけん、後から来んさい!!」
と怒鳴って家から飛び出す私。

お宮の周りは準備でおおわらわ。
派手な出店のテントが立ち並び、
ねじり鉢巻きの大人たちが台を並べたり、
商品を出したり、
そんな様子をワクワクしながら見て回っていた時のことです。

境内を出た、小さな溝の側に、
それはありました。

アイスクリーム屋さんがいる!!!!
白い手ぬぐいを被った、中年のがっちりしたオバサンが、
細長いアイスクリームが詰まった容器の横に立っています。

おばあちゃんから100円もらっていた私。
(玉じゃなくて、札。板垣退助である。)

もちろん即座に購入し、
安っぽいコーンにのったザラザラしたアイスを食べながらプラプラしていると、
やっと弟がやってきました。

「ワシも食べたい。」

「おばあちゃんから、百円もろた?」

うなずいて、札を見せる弟。
その弟を連れて、再びアイスクリーム屋さんに行きました。

私は早く他の店を見て回りたかったので、気もそぞろです。
あっちに金魚すくいや、ねぶりクジがあるし、
おもちゃも並び始めてる。

「早よ、行こうや。」
アイスクリームを持った弟を急かす私。

ところが、弟はじっと立ったまま、動こうとしません。
口下手で大人しかった弟は、黙ったまま、顔が真っ赤です。

そこでおばちゃんが一言。

「お金、まだもろうてないんよ。」

「えっ、アンタ、はよ百円札出しんさい!!」

弟は、ふりしぼるような声で、

「ワシ、払うた・・・!!」
そう言うと、めそめそ泣き始めました。

その瞬間、私は悟ったのです。
このオバサン、百円をだまし取る気なんだ。

頭にかっと血がのぼりました。

そこで私は、
弟の服のポケットを全部調べて、

「おばちゃん、この子がさっき百円を持っとったん、ウチ見たよ。
 どこにもないもん、払うとるはずよ!!」
と、無実の証明をこころみました。

「アンタ、この子が払うとこ見たんね?」

うっ、アッサリ言葉に詰まる私。

「この子が嘘、言いよるんよ。もしかしたら、風に飛ばしたんかもしれんよ。
 はよ、アイス代払いんさい。」
と、勝ち誇ったかのように言い放つオバサン。

風なんか、吹いとらん!!馬鹿にしやがって!!

「おばあちゃん、呼んでくるけん。」
弟の手を引いて帰ろうとすると、

「待ちんさい、その子のアイス代まだもろうてないけんね。
 このまま逃げる気じゃろう。お金、払うてからにして。」

口惜しさに頭が爆発しそうになりながら、
とりあえず10円を払い、泣いている弟の手を引っ張りおばあちゃんの元へ。

話を聞いたおばあちゃんは、割烹着で手を拭き拭き、
一緒に走って来てくれました。

・・・・・・・・・ダメでした。

オバサンは、受け取ってない、証拠がない、の一点張り。
弟と二人でいくら訴えても、知らん顔だったのです。

すごすごと3人で家に帰りつくと、
おばあちゃんは弟に言いました。

「泣きんさんな。また100円あげるけん。」

それを聞いた私はまたまた逆上し、

「おばあちゃん、警察に言おう。うちら、絶対に嘘ついてないけん。」

おばあちゃんは、可愛そうに、という具合に私の頭をなでながら、ただ、
「用心せんと、いけんよ。」
と真面目な顔で静かに言って、その事件は終わったのでした。

理不尽を覆せない悔しさ。
アイスクリーム屋のオバサンの足元に散っていた真っ赤な落ち葉とともに、
未だに忘れられません。

楽しいばかりのお祭りに、
たった一つ、陰を落とした思い出なのでした。





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Posted by キリンさん at 14:19│Comments(2)王様の耳はロバの耳
この記事へのコメント
そんな!そんな!
お祭りで胸が踊るくらい楽しみな気持ちでいる子どもの心を踏みにじるなんて!ひどすぎますっ!!
神様は見てるから、そのおばちゃんにはきっとバチがあたってますよね
私もお祭りでぼったくられ泣いたことあります
べっこう飴やさんで、真彦と書いた飴
値段聞いたら500円と言われ、マッチファンの私は清水の舞台から飛び下りるくらいの気持ちで買ったのに、渡されるときには2000円と…
そんなに高いなら要らないと言ったのに、もう買うっていったからだめとすごい怖い顔で言われたのでした
今でも忘れられない嫌な思い出です
だから、すっっごく気持ちがわかりますっ
Posted by Bebe at 2014年10月04日 22:41
Bebeさん

えっ!!500円でも高いのに!!!
2000円~~~!!!???
あり得んやろ。

人を騙しても、いいことないのにね。
きっとバチが当たってるに決まってます。

と思っても、悔しさは残るよね。
気持ちをわかってもらえて嬉しいっす。
Posted by キリンさんキリンさん at 2014年10月05日 13:31
 
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